最近流行りのラーメン店に欠かせないもの。それは高級素材・無化調・仰々しい薀蓄書きの数々であろう。なぜラーメンに高級素材を使うのか。そりゃあもちろん、その方が味がいいからに決まっている。なぜ無化調でダシを取る必要があるのか。その方が後味がいいからである。
前者2項目はいずれも顧客本意に立った配慮なのであり、極めて結構なことなのだ。ならば、後者の薀蓄書きはどうなのか。
その4でも述べたが、高級素材の良し悪しはそれ単体で食べただけではなかなかわからないものである。が、高級品とそうでないものを同時に比較して食べれば、違いはわかるのだ(どちらが高級品なのかはわからないかもしれないが(笑))。
まして、素材を直接食べるわけではないラーメンスープにおいては、直接食べ比べても素材の違いを見分けるのは至難の業。それに加えて、同じスープでも調理人の麺上げなどの技量一つで味がまるで変わってしまうのだ。はっきり言って、ラーメン作った本人以外には誰にもわかりゃしないのである。
そこで薀蓄書きの登場である。味に自信があるとかうちのスープは日本一うまいとか、何の根拠もない精神論のみの薀蓄書きなど願い下げだ。まして、ウチのスープは1回食べただけでは味がわからないから3回食べてくださいなんて類のものは、客に対する言い訳と取られても仕方がないだろう。
最近はそんなヤボなことは書かずに、スープはもちろん麺や具に至るまでどこそこのなんとか豚を使用しましたとか、丁寧に書いてあるのが流行りである。自分の食べているものにナニを使っているか、読めば誰でもわかるという寸法だ。こうしてお客さんは自分の食べたものをありがたがることができる。高級素材を使っているからおいしい。こんなにはっきりした根拠は他にない。そこに書いてあるのが事実に相違なければの話だが。
一方で、どこの店とは言わないが明らかに薀蓄負けしたラーメンを出す店がある。なんでこんないい食材使っているのにこんな味ですか?と言いたくなる。素材の味を見事に殺しているのである(笑)。こうなると食材の薀蓄はたちまちのうちに客への言い訳に成りさがる。味のともなわない食材薀蓄は、根拠のない精神論にも劣ると言えよう。薀蓄は、決して実際に出しているラーメンの味を上回ってはならないのだ(笑)。
さて大幅に話がズレまくったところで(笑)、先日の石川家偽表示発覚事件を振り返ってみよう。
こちらのお店では、1998年頃から表示と異なる食材に切り替えたという。これが事実なら、アタシは鹿児島産豚骨のスープなんか一度も呑んだことがないことになるのだ(笑)。とはいえ、味の面のみに着目するならそんなことは大した問題ではない。家系スープの味わいは鶏がらや豚骨をこれでもかとブチ込んだ物量攻撃によって醸し出されるものなのであり、食材それ自身の旨さにはさほど依存していないと思われるのだ。いくら高級素材を使ったところで、強火でぐらぐら煮込んだら素材の繊細な旨みはあっという間に吹っ飛んでしまうだろう。
だから、もし最近の石川家は味が落ちたと思ったのなら、それは食材の偽装以前に多店舗展開の弊害による調理人のラーメン造りの技量の拙さなどに原因がある筈なのである。
石川家の4年間にわたる偽表示は顧客に対する裏切り行為であり、倫理的に不注意で済まされるものではなく、弁解の余地はない。社会的制裁を受けて当然のことである。
ただし薀蓄書きにラーメンの味が負けていたのかといえば、そんなことはないだろうとも思う(アタシの知る限り、戸田店を除くが(笑))。表示通り鹿児島産豚骨を使っていたら今以上のスープができるのかどうかは定かでないが、少なくともどこの豚の骨かわからない素材を使って現在も一定の水準にある味を作りつづけていること自体は、評価してもいいだろう(笑)。
なお現在石川家大宮店の店頭には、偽表示のお詫びとともに今後も厳選された素材で味の維持につとめて参ります云々の張り紙がある。厳選されていれば産地には拘らないということなのだろうか(笑)。
現在巷を騒がせている食品業界への疑惑は多岐に渡っている。偽表示と知りながら4年間それを続けてきた石川家は論外として、卸業者が持ってきた食材を信じるしかない個人店にとってはシャレにならない事態だろう。少なくとも味については自分の舌を信じればいいのだが、食材の出所の正当性については神に祈るしか手はない。
ちなみに当サイトでも店の食材薀蓄の記述を丸写しすることがあるが、これははっきり言って書くネタに困っていることの裏返しに他ならない。少なくとも、ラーメンサイトの運営者にとって店に掲示してある食材薀蓄は非常に便利なものなのだ。頭を使わずにネタが書けるからね(笑)。
(2002.09.04)
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