JR東十条駅を降りたら、東京ラーメンマリオンと反対側の左手に出て坂を下って行こう。五叉路を直進、その次を右折すると、左手に黄色い看板が見えてくる筈だ。そして赤い文字でハッキリこう書いてある、吉村家と。
吉村家といえば、ご存じのように現在は横浜の中心街に店を構える家系ラーメン総本山。よりによって東十条くんだりに支店を出してきたのかといぶかったアナタ、よーく看板を見直して欲しい。家のとなりに、小さく7と書いてあるのに気づくだろう。そう、ココはまぎれもない吉村家のニセモノ、吉村家7なのである(笑)。
ニセモノと聞いて、どんなモノを想像するだろうか。黄色い手袋を付けたショッカーライダー? それとも、目尻の妙にとがったニセウルトラマンだろうか。ここは吉村家セブンに敬意を表して(笑)、腕輪足輪のついたニセウルトラセブンを想像してもいいだろう。いずれにしても、ニセモノのニセモノたるゆえんは、一見ホンモノに似てはいるが、よく見ると明らかに違うところにあるのではないだろうか。さて、吉村家7の場合はどうだろう。
中ではきったないU首シャツにタオルのハチマキという家系コスプレ(注1)に身を包んだおっさん2人が、黙々とラーメンを作っている。
入り口に食券機はないから、並を喰いたいのに間違って中盛の食券を買ってしまうことはないし(注2)、入れ替え制をしくほど行列ができているわけでもないから、みんなゆっくりラーメンを喰っている(注3)。
席はカウンターのみ。家系の店なら必ず、おろしにんにく・おろししょうが・豆板醤・酢の調味料が揃っているものだが、ここにはしょうがや豆板醤は置いてない。
ふと見上げると、マジックで「ラーメンを真面目につくる店です。店員に話しかけないで下さい」と投げやり気味な字で殴り書きされた張り紙が見える。話しかけられたくない理由はよく分かるのだが(笑)、まああれこれ事情を詮索するのも無粋というものだろう。
家系の特徴たる鶏油は作り置きするタイプで、これも吉村家直系風。湯切りは平ざるで行い、なかなか丁寧な仕事だ。
肝心のラーメンだが、見た目はそれなりに家系を再現している。茶濁したスープに太麺、ねぎにチャーシュー、ほうれん草にのり3枚。しかしそこはニセモノの宿命、喰ってみればたちまち正体はバレる(笑)。本家吉村家のスープも横浜に移転してからは薄くなったと評判だが、ここのはそれを更に2倍希釈したあっさりさ(笑)。麺はよく見るとちぢれたフツーの中華麺をただ太くしただけだ。のりは向こう側が透けて見えるほど薄く、スープに浸けて30秒で崩壊してしまう。そしてチャーシューは缶詰の肉のようでボソボソだ(注4)。だから、決してうまくはない(笑)。
とはいえ、これだけ堂々とニセモノを標榜し、確信犯的に見た目そっくりなラーメンを出してしまうセンスには脱帽せざるを得ない。世間には、家系を謳っていないのに味が明らかに家系そっくりな店も存在するが、吉村家7はハッキリ違う。どう考えてもラーメンのおいしさなど二の次で、家系に似ていることだけを狙っているとしか思えない。単なるモドキではなく、れっきとしたニセモノに徹しているのだ。
それでも、商売的にそれではマズいと思ったのか、しっかり冷やし中華などもメニューに加えているのがいじらしいところだ(笑)。
ニセモノを知ることで、本物の本物らしさが実感できる。本物を知らなければ、ニセモノのニセモノたるゆえんを理解することはできない。真のラーメンコレクターを目指すのなら、このような店でアナタの価値観を試してみるのも一興ではないだろうか。
(00.08.29)
(01.04.22) 写真差し替え
(01.07.19) 小ネタを追加
注1:家系ラーメンの店は、たいがいタオルのハチマキ、U首シャツに腹巻というのが定番スタイルである。要するにバカボンのパパのコスプレだね(笑)。
注2:吉村家やその直系の杉田家の食券機は、なぜか左端の目立つ場所が中盛になっており、並は右下の目立たないところにある。ちょっとセコイぞ(笑)。
注3:吉村家直系店は、カウンター席を2分割し半分ずつ客を入れ替えて一気にオーダーを通すシステムとなっている。したがって、一気に10人分以上のラーメンを作るために麺の茹で具合はバラバラ、あまりゆっくり食べていると周囲にだれも居ないカウンターで行列待ちの人たちの冷たい視線を浴びながらラーメンを喰うハメになるのだ。
注4:とはいえ、元々家系ラーメンのチャーシューはボソボソしておいしくないものが少なくない。本牧家系列(本牧家@上永谷、まこと家@青物横丁)はその傾向が特に顕著だ。ちなみに、吉村家直系店は旨い方。
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